Residence@Kiryuu
design:Sunao Koase(IZAP.labo) execution: Syouei date: Jan.2008
この家について。
最初にお施主さんからの要望として、木の質感と昭和っぽいというイメージを与えられた。
今現在新築の住宅を建てるにあたって"昭和"に対してどう答えるか? 単純に昭和レトロのような表現で"昭和"の雰囲気を作ることは容易い。 しかし、それでは実際の昭和に建てられた住宅の持つ時間経過によって得られた質を超える事は出来ない。それならいっそ昭和に建てられた住宅に住んだ方が良い。
"昭和"の住宅の感覚をいくつかに分け、それを現在の住宅に落とし込む。 そうする事によって、今後時が過ぎた時にもこの家が昭和の感覚を持ち続ける。 そのときにそれを昭和と感じる事は無いだろうが、その感覚は昭和の住宅を訪れた時に感じた心地よさへとつながるだろう。
まず感覚的な物として昭和のスケール。四畳半、六畳間といった身近な広さ。 素材の質感。木、金属、塗り壁。時間が経つにつれ、"汚れ"が"味"になるような素材。
素材の使い方として、現代的なミニマリズム、モダンから続く要素を消す作業の中に"!"や"?"を入れ込む。 つまり"真っ白"だけでなくその中に素材やポイントとなりうる要素を入れる。 少量のバグを入れ込む事によって、ちょっとしたカオスが生まれる。 そのカオスが生活のリアリティを生む。人が生活する場としてのリアリティ。 "真っ白"の中では人の存在までも排除する事を望む。 もしくは、人だけが残り空間に取り残されてしまう。その中には生活のリアリティは無い。
作り方としては、部屋を作る。というのではなく場所を作るようにした。団らんの場所、ご飯を作る場所。畳がある場所。 各部屋を配置したというよりは、建具を閉めれば個室にはなるが、各場所がつながって全体として一つの家になっているイメージ。
二階は、子供の成長など時間経過による使い方の変化に対応できるよう、何をする場所かも決まっていなく、どのようにも使える場所を用意した。 建具と天井の高低差によって、同じ場所は一つもない変化にとんだ場所が現れてくる。 中なのに外のように明るく解放された場所。そこから自分の場所に帰る。全体をつなげて広場として使う。完全に個室として使う。閉じる場所により、様々な使い方をする事が出来る。 四角い部屋を平行に四角く区切るのではなく、四隅に部屋を持ってくる事で細長く使ったり、L字に使ったり、部屋にならない程度のつながりを作る事も出来る。各部屋は四畳半と六畳間。 この構成を作りながら考えたのは"どの範囲までを部屋と感じるのか?"という事。 壁や明るさによってどこまでを自分の場所と感じるのかオープンハウスの時にじっくり体感して考えたい。
これらの考えは、打ち合わせ時のお施主さんとの会話の中から生まれたものである。 そこにこれから住む人の感覚。毎日の生活。それを直接会話の中から感じイメージし形にしたもの。"昭和"という言葉をもとにお施主さんの感覚を共有し形にしたもの。 床や取手、壁紙などは数ある物の中からお施主さんが探し出してきた物で、二階の壁も自主塗装。
家を作る中でそこでの生活のもととなる場所を一緒に作れたと思う。
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